4歳上の兄がいます。
昔から何をするにも一緒。
お笑いもゲームも絵も競馬も今考えると全部「これ知ってるけ?」の喋りだしから兄に教えてもらったものです。
全て僕の今の仕事になってるのだから世の中わからんもんです。
兄は弓道をやっていました。勉強もろくにやらなかった兄が唯一真摯に打ち込んでいたのが弓道でした。学生時代には京都で三位の腕前を持っており兄が日曜日に大会にいけばトロフィーや賞状をハンバーガーをテイクアウトするかのように当たり前に持ち帰ってきたもんだよ(急にアメリカンジョーク風になりましたがただやってみたかっただけです)

僕が小学生で兄が中学生の頃、ゲームをしても片づけない僕に兄は怒りました。しかし僕は「綺麗にしたいんならお前が片付けろや!」と理不尽な逆ギレで応対。兄はそれを聞くなり部屋を出てどこかへ行きました。
僕の迫力に圧倒されたんだろう、そう思っていた矢先に兄は駆け足で部屋に戻ってきました。

弓を構えながら。

どこの兄弟喧嘩で弟に弓を構える兄がいるでしょうか。
そして兄はキリキリと弓を引きながら僕に静かにこう言いました。

「謝れ」

もうランボーです。
僕は絶対降伏、土下座で謝りました。すると彼はあろうことか矢を壁に向けて放ち部屋を何も言わず後にしました。
ランボー2です。
今でも実家のその部屋の壁には見事な穴があいています。

いちいち大げさな兄。
こんなこともありました。
僕が小二で兄が小六の時、二人で近所の銭湯にいきました。
その帰り道、兄が突然走りだし「家に先に着いた方が優勝~」と叫びました。
賞金も名誉もないレースが急に始まることは日常茶飯事。
僕も負けじと走りますが小学生時の4歳上にはかないません。
「おっそいな~!」と兄が憎たらしい顔でこちらに振り返ったその時です。
路地から出てきた車に兄がひかれました。

時速5キロぐらいでしょうか、徐行しすぎな車に兄はひかれました。いや、というかちょっとおされた、いや正確には自分からぶつかったの方が正しいと思います。
運転手の方も「ぼく大丈夫か~?」と冷静です。
僕もあまりの徐行に無事を確信してました。しかし絶対無傷なくせになぜか倒れてる兄の元へ。
僕が「おい」
と声をかけると兄はわざとかすれた声でこう言いました。
「お…、お母さんに今までありがとうって伝えてな…」
僕は「自分で伝えろ」と思いました。

でんごんばん CIDER inc.