川の思い出。

天気も良く涼しい風が吹いてますね。
こんな日は川に足だけつけてビールのみたいです。
現実の僕はクーラーのない楽屋でもう終わったレースの競馬新聞を真っ赤な目で読んでいます。(なぜ予想がハズれたかを身に焼き付けるため)

海よりも川が好きです。僕は京都の宇治出身なので有名な宇治川が家の近くに流れていました。小学校の帰り道も宇治川に寄って川沿いをぶらぶらしたり平べったい石を探したり釣りをしたりして楽しんでました。

小学5年生のある日、いつものように学校終わりに友達4人と川沿いでだらだらと喋っていました。
そこに川上から桃、ではなく空き缶がゆっくり流れてきました。
一人の友達がその空き缶に向かって「ギラ!」といいながら石を投げました。ギラというのはドラクエの攻撃呪文です。
石は缶に当たり「こーん」と心地よい音がなりました。
するとまた違う友達も「ベギラマ!」といいながら石を缶に投げます。また「こーん」と音がなりました。こういうくだらない遊びとラブストーリーは突然始まるもんです。僕も呪文を唱えながら石を投げます。次第に「あの缶に石を当てて沈めた奴が優勝」ということになり投げる石も大きくなり始めました。
「メラゾーマ!」「イオナズン!」「ライデイン!」「ギガデイン!」石の大きさに比例して呪文のランクも上がっていきます。それでもなかなか缶は沈みません。
その時です。
「どけぇぇぇ!」友達の一人の福島君がだいぶ離れた後ろから走ってきました。
両手で自分の顔よりも大きい石を頭の上にかかげながら全速力で走る福島くん。
「す、すごい!」
他人が見れば馬鹿サッカーのスローインに見えるこの景色も僕らには神々しい英雄の姿に見えました。
後はあの巨大石を缶に向かって投げるだけ。
しかし我々の目に飛び込んできたのは信じられない光景でした。

福島君は「メガンテ!」と大声で叫び石を頭の上にかかげたまま自分ごと川に飛び込んでいきました。
あまりの衝撃に我々は言葉を失いました。
メガンテというのはドラクエで自分の命を犠牲にして敵に大ダメージを与える禁断の魔法。

しばらく呆然として僕らの頭には同じ言葉が浮かんできました。
「石…、いらんやん…」

福島君は本物の馬鹿でした。
でも川から上がってきて彼が照れくさそうに言った「…手放すの忘れてた」で僕らは窒息死するぐらい笑いました。

夏の川を見ればそんな青春を思い出します

でんごんばん CIDER inc.