みかん
福島君。
小学校の同級生。
くだらない事をやり続け女子からは嫌われる反面、男子からは圧倒的な支持率を誇る各学年に一人は必ずいる『バカのカリスマ』
それが福島君でした。
このブログでも度々紹介していますが今日はみかんにまつわる彼の話をしましょう。
小学4年生の時、給食のデザートでみかんが出ました。
これを普通に食べないのが小学生男子。
美しすぎるみかんを目指し、丁寧に皮をめくり白いすじの除去に異常な程の執念を持つ男子。
みかんの中身だけをチューッと吸い出し薄皮を残して食べるおばあちゃんみたいな男子。
みかんの中に稀にある耳たぶサイズのめっちゃちっちゃいみかんを見つけて喜びポケットに入れて5時間目にそれをこっそり食べる男子。
みんな様々なミッションを独自に背負ってみかんを剥き、そしてみかんと向き合っていました。
僕はといえば
丁寧に皮を剥いた後、一房も外さずみかんを丸ごと口に入れて食べきるという技を持っていました。
それをすれば男子からは歓声と拍手が起こりヒーローになれました。
僕の口が大きくなったのは自らのその技に溺れていたためです。
しかしある日それを見ていた福島君が言いました。
「甘いな、俺は2ついける」
2つ…だと?
小学4年の成長途上の小さな口では1つですら困難極まりないというのに。
しかし相手はあの福島。不可能を可能にして女子から嫌われ続ける男。
事実彼の目は一点の曇りもない。
本当か?
「じゃあ次給食でみかんが出たら俺の分あげるから2つ一気やってみせてや」
僕の挑発に福島君は親指を立てて「OK」と答えました。
その一週間後
戦いの時はすぐ来ました。
自らのみかんと僕のみかん剥き、それぞれを両手に持つ福島君。
歴史の証人になるべく取り囲む男子生徒達。
勢いよく一つ目のみかんを口にいれる福島君。
見事口の中に収まりきりました。
が
どうみてももうパンパン。
さらにもう一つなんて挑戦するだけでキャリーオーバーになるのが明らかです。
しかしそこは福島。
膨れあがった口の中に2つ目のみかんを無理に押し込みました。
その瞬間
「ボブッ!」
奇妙な声あげて爆発した福島君の口元。
飛び散る果汁。
無謀すぎる挑戦を見事大失敗で終えた福島君。
顔をあげた彼はオレンジ色の涙を流していました。