ゴルフ

僕が小学生の低学年の頃
ゴルフが流行りました。
といっても早朝からトランクにクラブを詰め車を走らせ仲間とコースに集まっては我先にと会員証を提示してホールに入り、スライスしたりピンそばに寄せたり寄せられたりでラウンドで切磋琢磨をバーディで後にした後スーパー銭湯で乾杯して帰路に着くわけではありません。
(僕は全くゴルフを知らないので誤った表現も混じっているかもしれませんがそこはご愛嬌、いわゆるダブルボギーってことでよろしく)

そう
小学生のゴルフといえば

『机に開いた小さな穴に向かってえんぴつで玉を弾く行為』
を指します。

玉といっても消しゴムのカスを集め糊を混ぜこねて丸めたものか練り消しを丸めたものが主流でした。
当初はさほど流行らなかったこの卓上スポーツですが
とあるものが発売されてからそれは男子の間でメジャースポーツへと押し上げられるようになるのです。
その商品とは
ゴルフクラブの形をしたえんぴつのキャップです。
男子は文房具屋に殺到しました。
あくまでえんぴつキャップでありギリギリ文房具の範囲。
なので先生に摘発される事もない。
それ故に休み時間には得意気にゴルフに興じる事が出来たのでした。

そのうち机に元々あいていた穴では満足できなくなり
コンパスの針で机に穴を掘りまくりオリジナルのコースをつくりだす猛者まであわられました。

そいつがやたら広い穴を掘り出したので僕は
「そんな大きい穴やったらすぐ入るからしょうもないで」
とアドバイスしました。
するとそいつは鼻で笑いその穴にぎっしりと砂を詰めて僕をの目を見てこう言いました。

「バンカーやがな」
なぜか不覚にも「カッコいい」と思ってしまいました。

その後もそいつは穴に水を貯めたりパットの瞬間に口で風を送ってきたりの手作業の工夫が人気を呼びみんなそいつの机でゴルフをするようになりました。
しかし

芝の感じを出したかったのでしょう

机全体に水糊を薄く塗りグラウンドから取ってきた雑草をちりばめたところを先生に見つかりビンタ(強)をくらいました。

男子全員教室の後ろに立たされ大説教。

「何でそこまでしてそれがやりたいねん」

なぜなんだろう。
誰も答えれませんでした。
皆その質問で我に返りゴルフブームはその日を境にピタリと終わりました。

残ったのは穴だらけの机だけでした。

でんごんばん CIDER inc.