ミニ四駆

僕らが小学生の頃、タミヤのミニ四駆が大流行しました。
改造を繰り返し自分だけのマシンをつくりその早さを競う。男子のツボをグイグイ指圧するそのシステムに僕らは夢中でした。
お小遣いを貯めてパーツを購入し愛車に装着していく喜び。不要になったパーツは友達のパーツと交換するのですが、僕みたいに金が無くてパーツをそんなに持ってない奴は歯を食いしばって給食のプリンとギアをトレードしてもらったり宿題を引き受ける代わりにホイールを手に入れたりと身を削ってマシンをカスタムしたものでした。
「このタイヤめっちゃダサいやん!誰も欲しがらへんやろうし捨てといたるわ」と言っておいて次の日平然とそのタイヤを着けてくる強者もよく現れました。
ちなみに福島君は普通のモーターを油性ペンで真っ黒に塗って「伊勢で伝説になったブラックモーター、400円でどう?」とバレバレの嘘をついた為仲間から一時的破門をくらいました。
(今思うとリアリティを出そうとして『伊勢』をトッピングしてきた彼のセンスはやはりただものではありません)
小学生の青春はミニ四駆と共に駆け抜けたのでした。
しかし、今再び子供達の間でミニ四駆がブームなのです
それを受けて先日ミニ四駆の特番が放送される事になり、MCにはなんと僕が任命されました。
様々な芸能人にミニ四駆を1ヶ月間預け、どれだけそのマシンを早くしてこれるか!?という番組内容でした。
その中にボビーオロゴンもいました。
ナイジェリアで生まれ育った彼はミニ四駆など知る由もありません。
しかしルールを説明すると「OK、とにかく早けりゃいいのか。バッタと同じだな」とすぐ理解してくれました。
(バッタの部分はナイジェリアジョークだったのでしょうか、僕はその時うまく笑う事ができませんでした)
多くの芸能人の中で一番夢中になっていたのはボビーでした。
そして大会当日。
まずは予選が開催され上位二名が決勝進出。
そこでボビーのマシンは見事二位に。
しかし走り終えたボビーのマシンを見るとタイヤが一つ外れていました。
なんと三輪の状態で予選突破していたのです。
次は決勝、タイヤが外れなければ優勝できる。
しかし、その気持ちが強すぎたボビーは機体とタイヤをアロンアルファで接着してしまいました。走れるわけありません。
しかし棄権はしたくない。
決勝がスタートした瞬間、彼はミニ四駆を前に投げました。
何度か跳ねただけのマシンはバッタのようでした。

でんごんばん CIDER inc.