特殊能力

僕はタマネギを切っても涙が出ません。
それに気づいたのは小学校の家庭科の調理実習の時。
皆タマネギを切っては、涙を流しキャーキャーと騒いでいます。
しかし僕がいくらタマネギを刻んでも涙は出ません。
皆が涙を流す様子を呆然と立ち尽くして見ていました。
山から下りてきたものの人間と打ち解けれない悲しきモンスターのようでした。
この「地味すぎる特殊能力」を舞台やテレビで御披露目したことはありません。
なぜか?
「すこぶるつまんない」からです。
皆の注目を集めといて「僕タマネギ切っても涙が出ないんですよ」はすこぶるつまんないからです。
しかし人間には最低でも一人一つは何かしらの「地味すぎる特殊能力」が備わっていると思います。
皆さんにも心当たりがあるのではないでしょうか。
地味すぎて人に言えない特殊能力が。
「指がやたら反る」
「いくらでも寝れる」
「何気なく時計を見れば3:33などのゾロ目」
「ここに来るまで全部青信号だったよ」
「俺の携帯充電残り1%になってからしぶといねん」
「これ何かの味に似てるよな。何かは思い出されへんけど」
皆さんの声が聞こえてきます。
しかしその中でも一番の「地味すぎる能力」を持っている人間を僕は知っています。
田村 裕(リアルダンボール戦機)
僕の相方です。
昔、劇場の楽屋に二人で籠もっていました。
明日新ネタをやらなければならないのにネタが全くできていない。
時刻は深夜2時を回ったところでした。
この切羽詰まった状況に焦りながらもネタを熟考していると「ザサーサ、ザサーサ」と相方の寝息が聞こえてきました。
『ナターシャ』の発音に近いこの音色が楽屋の中でリズムよく繰り返され僕は苛立ちを隠せませんでした。
しかしここで彼が寝ても影響は無い(詳しくはブログの『ネタ』の記事参照)
だからといってこのまま寝させるのも何か違う。
ふと楽屋の床を見るとサイコロが落ちているではありませんか。
僕は田村の鼻にこのサイコロを詰めてやろうと企みました。
どんな反応するかな、そう思い田村の鼻にサイコロを詰める僕。
苦しそうにしながら鼻息をフンッ!と出しサイコロを鼻から吹き出す田村。
そのサイコロを見ると
6です。
6の目が出ています。
もう一度鼻に詰める、吹き出されるサイコロ。
6です。
3回やりましたが絶対6が出ました。
「睡眠時に鼻からサイコロをふると必ず6がでる能力」
いらね

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