コンビ名

今から14年前の1999年に僕らは初舞台を踏みました。
養成所では「田村・川島」でしたが舞台に立つならコンビ名はつけた方がいいと言われました。
ネタ合わせ終わりに相方と公園で相談。
しかしデビューもしてないのにコンビ名つけるのは気恥ずかしく「なんでもええよな」と二人で話し合うのですがなんでもいいからこそなんにも決まりません。
すると相方が言いました。
「うーん、…楽楽笑でええかー」

『らくらくしょう』
と読みます。

「なんか楽しく楽しく笑おうみたいな意味でな」
と相方は続けます。
こんなもの咄嗟に浮かぶわけありません。
「なんでもええよな」と言っておきながら相方は確実にだいぶ前から暖めてた作品(問題作)を発表してきたのです。

それにしても

ダサい

楽楽笑

商店街の小さな居酒屋です(前を通れば常連さんのカラオケが聞こえてくる)

「…ちょっとダサすぎひん?」下を向いたまま僕は言いました。
「いや、例えばやん、例えば、楽楽笑やん」

どんな例えだ。
(キートン山田さんの声で脳内再生してください)

結局当時あまりいなかった漢字のコンビ名にしようと決めました。
しかも難しい漢字の方がインパクトがあって覚えてもらえるんじゃないかと考えひねり出したのが
『薔薇』
『憂鬱』
『麒麟』
でした。その中なら一番ましだということで『麒麟』に決めました。
今思うとほんとによかったです。
舞台に男二人が出てきて僕がマイクに口を近づけ低い声で
「薔薇です」

もう完全にそっちの二人です。

これから漫才をしようというのに
「憂鬱です」
も「だったら帰れ」と言われておしまい。
「麒麟です」でよかったです。

しかし難しい漢字なのでファンレターなどでよく間違えられます。
「麒麒」になってたり「麟麟」になってたり見たことない漢字を書かれたりします。
一番ひどかったのは
『群馬』

でした。これは間違いすぎて気持ちが良かったです。

あとひどかったのは『馬』へんに『鹿』という漢字をオリジナルで開発して手紙の宛先に書いてくれてました。
『馬』へんに『鹿』なんですからこれはもう『馬鹿』です。
女子高生らしくすごくかわいい文字で『馬鹿のお二人へ』と書いてました。
あながち間違ってるとは思いませんが「これからも馬鹿を応援します」と手紙は締めくくられており心の広い人だと感動しました。

でんごんばん CIDER inc.