好物

これを読んでいる君へ
君がこれを読んでいるという事はこれを君が読んでいるということだろう。
(冒頭から奇をてらいすぎて失敗しています。辛い立ち上がりとなりましたがここは我慢して読み続けよう)
君は自分の本当の好物を知っているかな。
僕は知っています。
今から5年前にテレビ朝日の人気番組「いきなり!黄金伝説」に出していただきました。
僕らが体験した企画は気温マイナス15度、湖一面に張った氷の上で釣った魚しか食べれない2泊3日のサバイバル生活でした。
幾多の芸人がこの伝説に挑んでますが釣り上げるワカサギの量は平均150匹ぐらい、多い時は300匹以上釣り上げるコンビもいたようです。
しかし我々が挑戦した時は不運にも大シケや暖冬が重なり
釣り上げたワカサギは3日間で

1匹。

1匹でした。

2日目の夜その1匹を二人でわけました。
3日間で食事は本当にそれだけでした。
しかしロケということもありテンションは常に高かったのであまり空腹は感じていませんでした。そんなことより「面白いものをつくりたい」その一心。
そのままロケは終了し前代未聞のワカサギ伝説達成。
「終わった、もう何食べてもええんやな」
ホッとしたその瞬間
ギュルルルゥゥ!という怪音がお腹から鳴り響きました。
緊張が解けたため抑制していた空腹が一気に襲ってきたのです。
ズン!ズン!と脈打つリズムでボディーブローを打ってくる空腹に思わず座りこみました。
そんな僕にスタッフさんが駆け寄ってきます。
「お疲れ様でした、近くに温泉があります。そこでさっぱりしたらすぐレストランに移動しましょう」
後光が差して天使に見えました。
スタッフさんが続けます
「そのレストランで好きなもの食べてい下さい。川島さんは何が食べ」
「カレェェェェェェ!!!」

自分でも何が起こったかわかりませんでした。
全く意識してないのに反射的に僕が叫んたのです。
スタッフの優しい問いかけを遮るように本能で「カレー」と絶叫していました。
そこで初めて気づきました。
ここまで追い詰められて食べたい物が本当の好物、僕にとってそれはカレーだったのだと。
「僕が思うよりも僕はカレーが好き」だっだのだと。
その後温泉で体重を量ると5キロ痩せてました。
そしてレストランへ移動。
念願のカレーを頼むと出てきたのは
キーマカレーでした。
そっちじゃないねん。

でんごんばん CIDER inc.