ライター

以前関西の番組でサイパンに行きました。
旅の途中の所々にドッキリが仕掛けられているというロケ番組でした。
中でも一番悔しかったのがライターのドッキリ。
休憩中にタバコを吸おうとしたら自分のライターが無い。
それを見たスタッフさんが「これどうぞ」とライターを貸してくれる。
そのライターをカチッと押した瞬間その指に電流が走るというなんとも地味なドッキリです。
大掛かりなドッキリ終わりの休憩中に起こったこのドッキリに無警戒で引っかかってしまいかなり悔しい思いをしました。
そして僕もこれで誰かを騙してやりたいと思いスタッフさんにお願いしそのライターを譲ってもらいました。
そんな事もありながらロケは無事終了、帰国の日がやってきました。
飛行機に乗る時に避けては通れないのが保安検査場。
飛行機の安全運行のため乗客と手荷物をチェックする場所です。
そこで事件は起こりました。

「お客様、どうやらライターが2つ入ってますね。機内への持ち込みは1つまでとなっております」
僕の鞄を調べた保安検査員のお兄さんが言います。
しかし私は年間何度も飛行機に乗り口からマイルが溢れ出しそうな小忙しい芸人、そんなルールは百も承知。
「え?ライターは1個しか持ってないです」
「いや、どうやら鞄の奥に入ってますね。調べてもらっていいですか?」
保安検査員が食い下がるので鞄に手をやるとそこから出てきたのはあのドッキリの電流ライター。
見た目は完全にライターですがガスも入ってなけりゃもちろん火もでません。
「あ、これドッキリのグッズなんです。押したら電流が流れるオモチャで火は出ないですよ」
僕は丁寧に説明しました。
しかし
「いや、これライターですね。機内への持ち込みは1つです」
認めない保安検査員。
その後何度も説明しましたが分かってもらえずお互いヒートアップしてきました。
そして僕は言いました。
「そんなにライターだと言うならカチッと押してくださいよ!火が出たら僕はここに捨てます!電流がきたらオモチャですよね!」
そういって検査員にライターを突きつけました。
いざ勝負の時。
明らかにビビりながらライターを握りしめるお兄さん。
しかし何度か深呼吸をした後、意を決し指に力をこめカチッと押しました。

そして苦悶の表情を浮かべながら僕にこう言いました。
「…い、痛いす」

だから言ったやん。

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