ネタ

漫才のネタは僕が書いています。
コンビを組んだ当初はネタはどちらが考えるなんて決めてませんでしたがなんとなく僕がいつも書いてネタ合わせしてました。
しかし僕ばかりがネタを書いてるのも不公平だなと思い一度だけ「明日までにネタ一本書いてきて」と田村にお願いした事がありました。
翌日
田村は書いてきました。

4コマ漫画を。

なにしてるん?
僕の口から自然にこの言葉が出てました。
「いや、絵のほうがわかりやすいかな思てな」
田村はいたって真剣です。
しかもその4コマ漫画のストーリーは
「普段は冴えないサラリーマン、しかし悪人が現れた時彼は電話ボックスに入りヒーローに変身し空を飛び悪人をやっつける」
というもの。
まさかの映画「スーパーマン」のダイジェストです。彼はスーパーマンのダイジェストを一晩かけて4コマにしてくれたのです。
笑いの要素は全くありません。
「これ…、どこが笑えるんやろか?」
すると田村は言いました。
「いや、低いねん、高度が。飛ぶ時の高度が低いねん。地面スレスレを飛ぶねん。低いやろ!ってツッコミいれるから大丈夫やで」

大丈夫なわけがありません。
まず僕は飛べません。だから高度の調節なんて難易度の高い事ができるわけありません。
人を助けるどころかコンビをピンチにしてくれたこの「スーパーマン」が舞台上に現れる事は勿論ありませんでした。
また別の日に僕の家に呼びだして僕がネタを書いてる横で田村もネタを書くようにとお願いしました。人が見てないとサボるんじゃないかと思いこの田村監視策です。
僕がネタを書き始めました。田村もまっさらなノートを前に腕を組んで熟考しています。
6時間後
僕は一本のネタを書き上げました。
ふーっと一息つき前を見るとまだ田村は熟考しています。
もう一息かなと思いノートを見ると
まだ白紙
…いや、何か一言だけ書いてある!
何だ!?彼が6時間かけてノートに書いた言葉は何だ!?
僕がノートを覗き込むと小さな字でこう書かれていました。

『網タイツ』

なにそれ。
6時間かけて網タイツです。
田村の顔を見ると顔をクシャクシャにして申し訳ない表情を浮かべていました。
それを見て僕が悪いんだと悟りました。
「ごめんね、ごめんね、辛かったろうに、ゆっくり休みな」
心からそう思いました。

僕の夢は僕が網タイツをはいて空を飛ぶネタをする事です。

でんごんばん CIDER inc.