美容院
初めて美容院に行ったのは20歳の頃。
それまでは地元の床屋さん(ジャンプじゃなくてチャンピオンを常備してるタイプ)でした。
でも大阪に出てきたんだから美容院に行こうと決めました、しかし勇気が出ずそれから美容院に実際行くまで1年かかりました。
堀江のおしゃれな美容院。
「こんなとこに美容院あったんだ」みたいな顔で店に入ります。
実際には店の前を1年間ウロウロしていたくせに。
しかし実際行くと美容師はとても優しくてすぐ馴染めました。
失敗といえばシャンプーの時に体を仰向けに倒され、それに驚き初夜の花嫁のような表情を浮かべて体を棒のように硬直させた事。(床屋さんはうつぶせでシャンプーする為)
早速ここに通い出しました。
しかし決まって聞かれるこの質問。
「川島さんて何されてる方ですか?」
困りました。当時テレビに出たこともなく仕事は週に1度の出番だけ。
なのに「芸人です」と答えるのはおこがましいと思い「えぇまぁ、いろいろです」と濁していました。
美容師もそれ以上は詮索してきませんでした。
そんなある日、天津の向が「初めての美容院に行きたいが勇気が出ないからそこを紹介して欲しい」と涙目で訴えてきました。
「昔の俺を見てるようだ」
バーボンをグイッと飲み干し、俺はそう思いました。
紹介すると向は次の日にもう髪を切ってました。
数日後、僕も美容院へ。
しかし入った瞬間に違和感。
美容師達がこちらをチラチラ見ては目をそらします。
いつもカットしてくれる饒舌なお兄さんも緊張気味で今日は無口です。
「どうしました?」と聞くと「いやぁ、す、すごい仕事されてるんですねぇ」と返事。
なるほど、向だ。
僕が芸人だという事を向が皆にバラしてしまったんだ。だからこんな空気なんだ。
それなら仕方ないと「黙ってるつもりじゃなかったんですが恥ずかしくて」と正直に答えました。
やっと会話が弾みだしました。
美「忙しいですか?」
僕「いや、週に一度舞台があるだけです」
美「舞台!?舞台でやるんですか?」
僕「え?普通ですよ」
美「すごいすね。ビデオとか出てるんですか?」
僕「ビデオ?は無いです。でも今度初めてテレビでますよ」
美「テレビ?」
僕「はい、生放送です」
美「生!?大丈夫ですか」
僕「いや、そら緊張しますけど頑張りますよ」
美「すごい!」
後日、向に聞きました。
イタズラで僕の事を『AV男優』だと言いふらしていたそうです。