ラジオ

高校生の頃、僕はラジオにハガキを出しまくっていました。
投稿し始めたきっかけは同級生の中本君。
数少ない友人である彼が共通して聞いていたラジオ番組に何の気なしにハガキを投稿し、それが採用されたのです。
悔しい。
深夜までラジオを聞き、次の日休み時間に「あれ面白かったなグフ」「あいつアホやでゲヘ」と教室の片隅で言い合っていた仲間がハガキを読まれた日から明らかに態度が変わり顔は自信に満ち溢れ、今まで呼び捨てにしてたパーソナリティの事を「さん」付けで呼び共演者ぶりだした事もあって何か差をつけられた気がしたのです。
「俺もハガキ出そかな」
「おう、待ってるで」
なんでお前そっち側やねんという気持ちをグッとおさえて僕はその日からハガキを出しまくりました。
番組や手段を選びませんでした。
大喜利番組、エピソード番組、音楽リクエスト番組、ついには早朝の俳句番組にまで投稿しました。(『雪溶けて つくしんぼうが 背を比べ』という作品を実際に送りました。読まれたかどうかは寝坊で確認してませんが後日、知らないおじいさんのテレカが送られてきました)
そんな努力もあって徐々に様々な番組で読まれる事になり、その中でも「常連」として活躍できたのが『坪倉唯子のはいぱぁナイト』というKBS京都ラジオの人気番組でした。
坪倉唯子さんといえば『おどるポンポコリン』などの大ヒット曲で知られるBBクイーンズのボーカル。軽快なトークを交えながらハガキを紹介してくれるこの番組が僕は大好きでした。
ある日の夕方、その番組のスタッフさんから家に電話がかかってきました。
それは今夜のはいぱぁナイト生放送クイズに電話で出てくれないかという依頼でした。
急すぎる展開。驚いた拍子に「はぃ」と答えてしまい僕はラジオに出ることになりました。
親にも言いませんでしたが中本君にだけは自慢気に知らせました。
「すごい!いつか俺も出たいなー!」
「おう、待ってるで」
僕は優越感に浸りまくっていました。
しかし本番
クラスメートとも喋れないやつがBBクイーンズと喋れるわけもなく緊張でガチガチ。
「大勢の人の中からある人物を探しだす今大人気の絵本といえば?」
「あ…あ…」
「ウォーリーを?」
「あ…う…」
「ウォーリーをさが?」
「……せ」
「はい正解」
もうリハビリです。
次の日、中本君はニヤニヤしながら「おかえりぃ」と言ってきました。

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