深夜の来客

昨日書いた審査劇甘マンションには4年程住みました。
なかなか快適な暮らしを送らせていただきましたが忘れられない出来事もありました。
深夜2時、突然インターホンが鳴り、何事かと思いドアの覗き穴から見てみると白い服を着た40歳ぐらいの女性が家の前に立っているではありませんか。
もちろん知り合いではありません。
足がある事は確認できたのでこの世の者であることはわかったのですが、しばらく警戒して観察しているとその女性が突然ドンドンとドアを叩き出しこう叫びました。
「こんばんわー!ファンでーす!」
近藤真彦ばりの元気な挨拶に爽やかさすら感じてしまいましたが冷静になればやはりこれは怖すぎる状況。
「はーい、川島でーす」と応対するわけにもいかず、しばらく無視していましたがドアはドンドンされ続けるし近所迷惑にもなるので意を決し刺激しないように気をつけながら話かけました。
「すいません、困るんですが…」
「あ、すいません!でもファンですよ!開けてもらえますか!」
「いや、開けませんよ。近所迷惑になりますからやめてください」
「いやいや、まぁ立ち話もなんなんで」
「いや困るんです」
「まあまあ、お茶だけでもどうですか」
「うーん…」

危ない。
知らぬ間に主導権が握られている。
なんて高等なテクニックだ。
しかしふと我に帰り警告。
「これ以上続けられるなら警察を呼びますよ」
「警察大丈夫ですよー」
何が大丈夫なのかわかりませんが全くダメージを与えられません。
しかし深夜に警察を呼んで大事になるのも好ましくなかったのでとにかく帰ってくれとドア越しに懇願し続けました。
すると彼女から不思議な提案が。
「じゃあ私の事を『嫌いだ』って罵ってもらっていいですか?そしたら私もすぐ帰れます」
なぜこっちが無理言ってるみたいにされてるのか謎でしたが一刻も早く帰ってほしい僕には願っても無い好機、反射的なスピードで応対。
「嫌いです。僕はあなたが大嫌いなので帰ってください」
きつめに言いました。
すると彼女は
「わっかりましたー。お疲れ様でしたー」
とバイト終わりのテンションであっさり帰っていきました。
それから二度と彼女が来る事はありませんでした。
ドアを開けていたらどうなっていたかわかりませんがその去り際の潔よさだけは評価に値するものでした。
明日の記事では更なる出来事をお話しましょう。

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