店員

先日ファミリーマートに行きました。
僕はボールペンと筆ペンを購入しようとそれらをレジに持ってきました。
すると店員さんが言いました。

「ご一緒につくね串はいかがですか?」
僕は別に細長いものを集めているわけではないよ。
店員さんにそう言いたかったのですがあまりにもキラキラした目でこちらを見てくるので戸惑う事しかできませんでした。
しかし悪い気はしません。
つくね串を売るために相手のスキを見つけて一瞬で懐に入ろうとするフェンシングのような商売姿勢は店員として素晴らしいと思います。
(略して『つくね串でフェンシングする店員』)。
小さな声で無愛想に接客している店員(不健康)より一生懸命さが伝わってきて気持ちがいいものです。
以前「CoCo壱番屋」に行った時も一生懸命な店員さんがいました。
通称ココイチ。言わずと知れた全国展開しているカレー屋さん。
僕の家から歩いて5分の所にもあったためよく利用していました。
店内で僕は期間限定のグランドマザーカレーというのを食べお会計をし、満たされた腹をさすりながら歩いて家に向かっていました。
店を出て500m程歩いた時、背後からすごい足音が聞こえてきたのです。
何事かと思い振り返ると先程のココイチの店員さん(中年男性)がこちらに向かって全力疾走しているではありませんか。
きちんとお会計もしたのですがその鬼気迫る顔は自分が食い逃げしたのかと疑ってしまう程の表情でした。
そしてようやく僕に追いつき、汗だくで息をきらせながら彼は言いました。
「ハァハァ、、お客さま、ハァ、た、ただいまグランドマザーカレーを、食べた方全員に、ハァハァ、こ、ココイチの、ハァハァ、あああ、ココイチのスプーンが当たるかもハァハァしれない抽選をしてもらっんす!ハァハァ!」
なんとスプーン抽選してもらうのを忘れしまったので500mもの距離を抽選箱を抱えながら全力疾走で追いかけてきてくれたのです。
彼は全身を震わせながら僕の前に抽選箱を差し出してくれました。
その店員さんの執念に応えるかのように抽選をひく僕。
箱に手を入れ三角形の小さな紙を引き出し店員さんに渡しました。
震える手で店員さんはくじを開きます。
そして顔をしわくちゃにして辛そうな顔で僕にこう言いました

「ハズレ…ェ…」

なぜだかすごく申し訳ない気持ちになりました。
店員さんはまた全力疾走して店に帰りました。

でんごんばん CIDER inc.