親友
小学生の頃、聖闘士星矢がブームになりました。
悪に対し『友情』と『努力』で『勝利』するというジャンプの三大原則をど真ん中から踏襲したストーリーに僕らは熱狂しましたが一番我々の心をくすぐったのが聖衣(クロス)という防具をまとい戦うシステム。
従来のアニメの『変身して強くなる』とは異なる斬新さが何より魅力的でした。
それを受け子供達の間でブームになったのがバンダイから発売された聖闘士星矢のフィギュア。
クロスが着脱可能なのはもちろん、クロスの部分だけが鉄で作られていたためその重厚感にやけにリアリティを感じて熱狂したものでした。
ぶつけあってくれと言わんばかりの頑丈さだったので、学校が終われば自分の聖闘士を持って誰かの家に集まり原作のバトルを再現したりアナザーストーリーを展開していたものです(簡単にいうとお人形さんごっこです)
しかし僕はといえば親が厳しくフィギュアなんて買ってもらえませんでした。
期待していたその年の誕生日プレゼントは硯(すずり)でした。
なので毎日みんなのフィギュア遊びを見学していたのですがどうしてもそれに参加したかったので一か八か自作の聖闘士で参加する事にしました。
皆さんは洗濯ばさみで人形をつくったことがありますか?
何個も組み合わせていけば動物であったりロボットであったりそれなりの形になるのです。
僕はそれが得意だったので洗濯ばさみを組み合わせ人型を作り、それを聖闘士のフィギュアとして集会に持って行きました。
(さあ、涙を拭いてください)
ちょっとぐらい戦ってくれるかなと思い意を決して皆の前にその「問題作」を披露すると瞬く間に壁に投げられ爆笑されました。
バラバラになった洗濯ばさみを拾いながら僕は「おもろかった?冗談やでー」と顔で笑って心で泣きました。
しかしその日の帰り道、僕と同じ『見学組』である上田君が話しかけてきました。
「川島くん、あれ本気やったやろ?」
一気に顔が紅潮する僕。
嘘をつく余裕もなく
「うん。僕アホやろ」
と素直に認めました。
すると上田君は嬉しそうに
「うち来て!見せたいもんがあんねん」
と僕を家に招いてくれました。
お世辞にも大きいとはいえない家、その居間で待たされること数分。
「川島くーん、いくでー」と言って姿を現したのはダンボールでつくった自家製クロスを全身にまとった上田君でした。
「今日これで行くか迷ってん」
僕と上田君が親友になった瞬間でした。