NGK

なんばグランド花月
通称『NGK』
1987年に開館された笑いの殿堂
今も朝9時45分から1000人を越えるお客さんが笑いを求め全国から詰めかけます。
今年は8月だけで10万人もの来場者数を記録したまさに日本一の劇場。
若手から師匠、漫才から落語、そして最後は吉本新喜劇とたっぷり笑いを堪能できるのです。
僕達も月に一度は舞台に立たせてもらっています。
15年目の僕達でも出番はいつもトップバッター。
そろそろ出番順を後ろにして欲しいなと思ったりもしましたが、何せ二番手の出番がWヤング師匠(ボケの平川師匠は72歳)なのですから僕らみたいな若輩者が出番順をどうこういえるわけもありません。

そんなNGKに僕がはじめて立ったのは2001年の秋。
子供の頃から憧れていた城にいよいよ入れるのかと感激していましたが、いざ足を踏み入れるとなると体がすくんでしまい外から何度もNGKを見上げてました。
意を決して中へ。
華々しい正面入り口とは違い関係者用の薄暗い扉をぎこちなく開きます。
すぐそこに警備員さんがいたのですが恐怖心からそれがスト2のベガにしか見えず逃げそうになりましたがなんとか身分を表記。
そしてさらに奥に進むとエレベーターがありました。
震えながらも乗って楽屋のある3階のボタンを押したその時です。
何者かがエレベーターに乗り込もうとこちらに走ってきました。
その勢いに驚きながら顔をよく見れば
なんと桂文珍師匠ではありませんか!
幼い時からずっとテレビで見てた文珍師匠がこちらに向かって走ってこられている。
あまりの事に震えながらも師匠を乗せなければいけないと僕はとりあえずエレベーターの「開」のボタンを連打しました。
しかし緊張で脳もパニックになっていたのでしょう。
僕が「開」だと思って連打していたボタンは「閉」だったのです。
勢いよく閉まり出すエレベーターの扉。
そこにダッシュで飛びこんでくる文珍師匠。
ガシャン!!
という音とともに僕の目の前に広がった景色は
首を挟まれ顔だけエレベーターに入っている文珍師匠でした。
その光景に混乱した僕はボタンをさらに連打。
しかしまだ「開」だと思っていたので当然連打しているのは「閉」
ガシャンガシャンガシャン
何度も挟まれる文珍師匠。
何が起きてるかわからず泣きそうな僕に師匠はおだやかな声でこう言いました。
「開けてぇ」

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