小島君
小学校の時はクラスに一人は必ず変な奴がいたものでした。
今思い返しても理解できない人。
小島君もその一人でした。
小島君は頭脳明晰で成績優秀、絵も上手くて男子人気の高いいわゆる優等生でした。
しかし一つだけ妙な『奇行』を持っていました。
優等生なのに女子人気が低かったのもそのせいでした。
その『奇行』とは
給食の時に出る白ご飯を
一度自分のお箸箱にきちきちに詰めて
それをまた皿に出して食べる
という行為でした。
箸箱から出されたご飯は箱寿司のように細長い四角の形態になります
それをまた箸で崩しながら食べる小島君に
男子は笑い女子は目を細め下唇をさらに下に広げ森進一の表情で軽蔑していたのでした。
しかし本人はいたってまじめ。
笑いがとりたいわけでも嫌われたいわけでもなく給食で白ご飯が出れば「そこに箸箱があるから」と言わんばかりの表情で当然のように奇行を繰り返していました。
パンの時はパンの時なりの奇行があります。
給食にコッペパンが出た時
小島君はコッペパンの茶色い部分、いわゆる表面の皮の部分を全部薄く剥がしてから真っ白になったコッペパンを食べるのでした。
茶色い部分を保護シートだと思っているのでしょうか、小島君は手際よく当たり前のようにこの奇行を繰り返していました。
食パンの時はまず耳の部分を食べてから残った白い部分のパンを指でこねて、小さなサイコロ状にしてから食べてました。
その「パンのサイコロ」をビニール袋に保存しておき
5時間目の授業中にこっそり食べるという技も持ち合わせていました。
なぜかこの行為は「カロリーメイト」と呼ばれ男子の中でブームになりました。
そんな小島君は京大を目指していたので遠く離れた賢い中学校に進学してしまいました。
中学になれば給食も無くなる。
小島君は奇行を露呈することなくエリートへ躍進していくんだろうなと思っていました。
時は経ち中学三年の時
僕は道で偶然小島君に会いました。
昔話に花を咲かせると当然給食の話題に
「アレはなんかみんなが見てくるからやめるにやめれへんかったわ」
当時の心理を教えてくれました。
しかしその時の小島君は
ペットボトルのお茶を一度キャップに注ぎ
日本酒を飲むかのよのうにグイッと飲んでいました。
治ってない。