17歳の恋

17歳の頃、スーパーでバイトをしていました。
僕のしていた仕事は日用雑貨の陳列、補充、在庫の管理。
学校が終われば直接スーパーに寄り21時ぐらいまで一人でそれらの作業をしていました。
陳列の仕方やポップの書き方ひとつで印象が変わり売り上げに影響するものだとわかってからは残業して自分なりに見栄えを工夫をしたり顧客の分析なんかもしてかなりやり甲斐のあるバイトでした。

ある日

いつものように売れた商品の補充をしながら店内をチェックしていると

視線を感じました。
振り返れば近所の高校の制服を着た女子高生がこちらをもじもじしながら見つめています。

「か、可愛い」

自然に言葉が漏れてしまった17歳の僕。
それが聞こえたかどうかはわかりませんが女の子はサッと小走りで店を出ていってしまいました。

なんだろう、あの娘
そう思いながらまた作業を再開しました。

次の日

またその女の子は来ました。

またもじもじしながらこちらをチラチラ見ては目線が合いそうになると顔をそむけます。

しかし「何か用ですか」なんてこちらから話しかける勇気も持ち合わせていない。
不思議な距離感のままの二人。

それから彼女は毎日決まった時間に来ました。
僕も最初の頃より少しは慣れて目が合えば小さく会釈できるぐらいにはなれました。
でも彼女はそれを見てハッとした表情を浮かべ隠れてしまうのでした。

いつのまにかその子の事が頭から離れなくなりました。

もう1ヶ月もの間僕に会いにきている。
これは好意だ。
毎日通って見てくれてるのは内気な彼女の精一杯のアプローチ。

次は僕がそれに答える番。

明日

明日彼女がまた来たら声をかけようと僕は強く決意し、上機嫌で仕事を続けました。
しかし
休憩のために一度事務所に戻ったその時、事件は起こりました。

事務所の扉を開くと

なぜか彼女の姿が

しかも号泣しています。

なぜ彼女が…?そしてなぜ泣いているんだ…?

状況を把握できず立ち尽くしている僕に店長が言いました。
「万引きや、この子万引き犯や」

机の上には大量の化粧品が並べられていました。
「すいません!学校には言わないでください!」

「あかん!この量は初めてちゃうやろ!」
ずっと僕を見ていたのは恋の視線ではなく
偵察だったんだね。
すごい恋の終わり方でした。

でんごんばん CIDER inc.