ぱん
昔タクシーに乗って現場に向かっていた時の話です。
テレビ局に向けてタクシーは高速道路を颯爽と走っていました。
その時
「パン!」
突然タイヤから乾いた音が響きました。
「運転手さん、今パンクしたんじゃないですか?」
不安になり僕は聞きました。
「大丈夫。今のは小石を踏んで弾いた音や。ほんまのパンクやったらもっとごっつい音しますわ」
運転手さんは笑顔で答えてくれました。
焦った自分が恥ずかしくなりましたが一安心。
再びタクシーは颯爽と目的地に走っていました。
すると一台の車が併走するかのように横に並んできました。
その車の後部座席に座っていた若い女の人がこちらに手を振ってきています。
走ってる最中に僕に気づくとはなんて嬉しい事だろう。
僕も爽やかに手を振り返して精一杯の笑顔をお返ししました。
しかし様子がおかしい。
手を降っている女性の顔が嬉しそうじゃない。
それどころか鬼気迫る表情で先程より激しく必死に手を振ってくる。
すごいファンだなと思いながらも様子がおかしいと感じた僕は耳に手をあて「なんですか?」とジェスチャーで尋ねました。
するとその女性が両手で下の方を指差す動きを始めました。
誰のギャグだろうと思いながら僕も女性と同じく両手で下を指差し笑顔をつくりました。
するとその女性が怒りの表情を浮かべ激しく下を指差し口の動きで完全に
「し!た!し!た!」
と言っています。
した?
下になにかあるのかとのぞくと自分の乗ってるタクシーのタイヤから真っ白な煙が立ち上がっているではありませんか!
やはり先程の「パン!」はしっかりパンクした音だったのです。
「運転手さん!パンクしてます!すごい煙!」
「えぇ!?そらあかん!」
慌てて止まり、様子を見るとタイヤのゴムは激しく破れ、もう少しでホイールだけで走る危険な状態でした。
女の人の必死のサインをギャグだと思ってヒゲダンス的な動きで返した自分を殴り殺してやりたくなりました。
しかし高速にいてもどうしようもないのですぐ近くの降り口までノロノロ走り高速を離脱。
辿り着いたのは寂しげな道路。
タクシーを降りて30分待ちましたがタクシーはおろか車すら通りません。
するとボンネットに座っていた運転手さんが言いました
「僕らこのままどうなるんやろなあ」
青春映画か。
はよJAF呼べ。
と思いました。