高校生活において学校で喋った言葉は
「はい」
「いいえ」
「あ…僕、川島です」
ぐらいなものです。
中学の頃に友達だったみんな(といっても5人)が違う学校に進学したりエリートクラスに行ってしまったので僕は一人になってしまい新しい友達をつくる事もなく静かに過ごしていました。
卒業したらすぐ芸人になると決めていたので勉強にも全く身を入れず授業中はずっと絵を描いたり当時から競馬が大好きだったので独自で競馬新聞をつくったりしていました。
その時の唯一の楽しみは深夜ラジオを聞く事、そしてそこにハガキを投稿し採用される事。
それだけが僕の生き甲斐でした。
暗い青春だと思うかもしれませんがそれなりに楽しい時代でした。
しかしいくら採用され自分のネタでテレビで人気の芸能人が笑ってくれたとしてもそれを伝えたり自慢する友達がいないのでそれが少し寂しかったです。
一度ファミコン通信(現在は『ファミ通』)に自分の4コマが載った時は朝早く来て誰もいない教室の真ん中にそのページを開いて置いておきました。
「なにこの4コマ、めっちゃおもろい」
「どれどれ、ほんまや!めっちゃおもろい!」
「でもこれ誰かの絵に似てるな」
「あ!川島か!?これ川島が書いたんちゃう?」
「すげえな川島!」
そうなるといいな、いやそうなるに違いない思っていました。
しかし現実は僕の次にクラスに来た澤野君がしばらくそれを見てサッと雑誌ごと自分の鞄に入れてしまい僕の計画は台無しとなりました。
しかしそれがきっかけで澤野君がゲーマーだということがわかりその後仲良くなりました。
約束しなくてもゲームセンターに行けば必ず会うので学校終わりに毎日僕らは一緒に遊んでました。
澤野君はゲームセンターでは饒舌で、ゲームの色々な事を教えてくれました。
しかし学校に行けば全く喋りません。
その理由を聞くと
「学校では静かやのにゲーセンでは本気出すってなんかええやろ?昼間は普通の学生やけど夜は暗黒の王みたいなさ。だから学校では喋りかけんといてな」
と言われました。
「あ、こいつホンモノや」
と思いました。
そんな澤野君は年をごまかして深夜バイトをしまくり高校生なのに30万もの貯金がありました。
何に使うのと聞けば
「20歳になったら風俗に行くのが夢やねん」
と明るく答えてくれました。
さすが暗黒の王。

あいつ元気にしてるかな。

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